10時限目は8の字

今日はイケイケのT指導員様。

緊張で戦慄が走ります。

ここんとこ、慎重なS指導員様や、若いA指導員様が続いてたので、すっかり腑抜けになっていたのですが、ここにきてT指導員様の登場は、吉と出るのでしょうか。


バイク小屋に行く道中、

「村々さん、前回は何かできた?」

と聞かれたので

「8の字をやりました。左足はずっとケンケンしてましたけど」

と答えたら

「それはできたとは言えないね」

と。確かにそうですね。


10時限目にして、まだ第一段階のみきわめには程遠いですが、まずはいつもの1コースを走ります。


道を覚えるのは大の苦手の私でも、やっとしっかりコースを覚えることができて、相変わらずのトロトロ運転ですが、このコースなら走ることができるようになりました。


が、しかし、さすがはT指導員様、私のトロトロを見逃してはくれません。

「村々さん!前よりずっとずっと遅くなってるよ。タイミング見て加速して。もっともっと!」

追い立てる追い立てる。

しばらくぶりのスパルタ指導が懐かしい。


一緒に教えてもらう、もう1人の方が、今日初めて1コースを走るようで、T指導員様はそちらに付きっきりになり、私は再びマイペースに戻る。


が、一時停止無視をしたときなどは、決して見逃さず、凄い勢いですっ飛んで来て、

「村々さん!ちゃんと停止して下さい。」

といちいち来て下さるのが有難い。


いつ何どき現れるかとビクビクしてしまう。


コースを何周かグルグルした後に、

「8の字行きますよ、ついてきて下さい」

とうとうきた!

T指導員様のことだから、ケンケンは許してもらえないだろう。

カーブの度に転ぶ覚悟をしなくっちゃ。


まずは0の字を走る。

「1周だけ1速で走っていいけど、2周目からは2速にして。絶対にブレーキ触らないで。足も手もブレーキは両方ダメだよ。2速にしたらクラッチからも手を離して」

おお〜〜無理だ〜。

ダメって言われたことをオールスターでやる。

ダメって言われても、転ぶ恐怖には勝てないのだ。

フラフラと大回りになる。

「目線は真ん中向いて!外見ちゃダメ。中!目だけじゃなくて顔ごと!」

「次の次くらいのコーンを見て。顔ごと!」

怖くて目だけ動かしている私を叱咤激励してくれる。

そのうち、ちょっと安定してきて、左足をステップにのせる事ができた。


でもやっぱり低速からは抜け出せずにいたら、

「タンデムするので後ろに乗って」

と。

なんか歳の差カップルみたいで嬉し恥ずかし、とかこっそり思いながら、後ろに乗らせて頂く。

両手は指導員様の肩にやる。

そしたら、すんごい勢いで走りだすじゃありませんか。

私を振り落とすのが目的じゃないかと思う程、グイーングイーンと車体を傾けて、超高速で。

車体の傾け方が尋常じゃなく、エンジンガードを擦りまくりである。

怖い怖い、ほんとに怖い。

1人で乗るよりずっと不安定であろうに。

その上、やめて!降ろして!怖い!もういい!もういい!と叫び続けるオバさんが、子泣きジジイのように背中にくっ付いている。

こんな状態でよくこんな斜めになりながら走れるものだ。


かなり周り、ガクガクブルブルになりながら、ようやく解放された。

「怖かった?自分で運転するより怖かった?」

と聞かれたので、もちろんめっちゃ怖かったですとも。と答えたら

「あんなに車体傾けても、ある程度の速度が出てれば絶対に転ばないんだよ。転ぶのは、車体の傾きにビックリしてブレーキかけた時だけ。だから車体傾けても速度だしてれば安定してるんだから大丈夫。

村々さんは、バイクを全く信用してないけど、大丈夫だから信用して乗ってみて。

目線と、速度さえしっかりしてれば絶対に転ばないから」

確かに!私は全くバイクを信用していない。

少しでも斜めになろうものなら、バッタンと横に倒れるに違いないと思っていた。

隙を見せたら私もろとも倒れてやろうと狙っているとしか思えなかった。


なのに、あんな勢いで斜めになっても倒れなかった。信用してスピードだして、車体を傾けるのもやぶさかではないと、気持ちが変わった。


私はバイクを信用するのだ。

言われた通りにやれば転ばない!

と意を決してやってみた。

まずは2速にしてブレーキは触らないでクラッチも触らない。

結構な速度が出てるけど、ビビらずに目線は内側にする。顔ごとである。

曲がる時は少しだけ車体を傾けてみた。


なんということでしょう!だんだん安定してくるじゃありませんか。

ほら!できたできた!と喜び勇んで指導員様を目で探したところ、指導員様はとっくにもう1人の方の元へ。

放置された私はひたすら0の字をグルグル回る。

10周以上は回った頃であろうか。

目が回ってきた。

でも、どのタイミングで止まればいいか分からず、更にグルグル回る。

完全に目が回り、コースアウトして溝にタイヤがすっぽりハマってしまった。


あらどうしましょうと思い、キョロキョロしてたら指導員様が駆けつけてくれるのが見えた。


指導員様が離れてからすぐにこうなったと誤解されてはいけないと焦った私は、一生懸命叫んだ。

「すっごい上手に、ほんとにすっごい上手に今までグルグル回ってたんですけど、目が回って、気がついたら溝にハマりました。たった今ハマったところです。」

褒めて欲しい幼児かなにかのようで、考えてみるととても恥ずかしい。


「回れてたねー、見てたよ」

と笑顔の指導員様。

‥‥胸キュンとはこういうことを言うのではないだろうか。

オバさんの心を鷲掴みだよ。

なるほど、教習所マジックなるものを体感しました。


その後、少しグレードアップしましょうと、0から8へランクアップ。

これも初めはブルブルだったけど、なんとか安定して走れるようになり。

右手はパーにして、とかの難題もこなし、ものすごい充実感を持って、今日の教習を終えました。


「今日は私、バージョンアップしたと思います」

と最後に原簿をもらう時に言ったら、

「そうだね、8の字ができたもんね。良かったね」

と。

いつもいつもイケイケスパルタ指導員様ばかりじゃ疲れてしまうと思うけど、要所要所で現れて頂けると、ほんとに進歩できる。

また、一週間後くらいにお会いしたいと思います。


明日の夕方も教習の予約をしてますが、雨予報なので、きっとキャンセルするだろうな。

こうやって少しづつでもできることが増えるのは、とっても嬉しい。

人よりずっと時間がかかるけど、頑張ります。